「売りたい業者」と「買いたい個人・世帯」のミスマッチ現象!? アトラクターズ・ラボの意識調査結果を探る
2009/10/17 09:59
不動産マーケティングのアトラクターズ・ラボは2009年10月16日、マンション購入検討者の定例意識調査結果の最新データを公表した。それによると、直近3か月において新築マンションの販売センターにいった経験がある人のうち、「購入したい物件が無かった」と回答した人の割合が3割を超えていることが明らかになった。これは2008年4月以降の定期観測においてはじめてのことである。また、公表されたデータをいくつか検証すると、これまで【住宅購入ニーズは「マンションよりも一戸建て」「建売よりも注文住宅」】や【2009年8月の新設住宅戸数、前年同月比38.3%減】など月次の新設住宅戸数データの記事で触れていた「在庫物件を少しでもさばきたい不動産業者」と「少しでも新しく・良く・自分のニーズに合ったあるいは反映させた物件を手に入れたい個人・世帯」とのミスマッチが改めて確認できる内容であることが分かる(【発表リリース】)。
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今調査は2009年10月2日から6日の間に、同社インターネットサイト「住まいサーフィン」モニターに登録した会員のうち、直近3か月間に新築マンションの販売センターに行った経験がある人のみを対象として行われたもので、有効回答数は173件。年齢階層、収入別階層などは非公開。
今調査では毎回「購入したいと思った物件数」について尋ね、その戸数について分析をしている。その中で「ゼロ件」、すなわち「色々観て回ったけど自分の目に叶うものはないネ」という人の割合を抽出したところ、これまで20%台でボックス圏を描いていた数字が、今回初めて30%台に達した。
3か月以内に新築マンションの販売センターに行ったが、購入したいと思った物件が無かった人の割合
季節変異の可能性も考えられたが、前年同月の2008年10月と比べても高い値を示していることから、それは否定される。さらに景気動向を考慮すると逆に減っていてもおかしくはないだけに、今回のデータからは「新築マンションセンターに、購買層の需要に叶う物件が少なくなっている」可能性を示唆している。
さらにもう一つ注目すべきデータとしては、1件でも「購入したい」物件があった購買層における「購入したいと思った物件」と、実際に「販売中の分譲新築マンションの竣工時期」の、それぞれにおける「竣工時期」比率。購買層が「欲しい」と思った物件は「竣工前」が2/3を占めているのに、実際に販売されている物件では「竣工前」が1/4程度でしかない。
購入したい物件の竣工時期と販売中の新築分譲マンションの竣工時期
この状況を簡単にまとめると
物件販売側:「手持ちの竣工済み物件をどうにか片づけないといけないから、新規竣工の物件は数を抑えなきゃ……」
という形になる。「買い手は新しいのが欲しいのに、売り手は古いのを売りたい」という、ミスマッチ現象が起きているわけだ。
冒頭のリンク先記事をはじめとして、昨今の不動産関連の記事で幾度となく触れているが、不動産市場そのものの低迷と「物件あまり現象」が伝えられるにおよび、買い手側は「色々な設備が整った新しい物件」「自分の想いを反映できる・融通が利く物件」を強く求める傾向がある。さらに「市場はしばらく低迷しているし、さらに下がるかもしれない。自分の要望を満たさないのであれば、無理をして買わなくともよい」という、「買うこと自体を保留する」選択肢も得てしまっている。言葉通り「買い手(側)市場」なわけだ。
売り手は「古いのを処分したい」
↓
新しいのばかりが売れ、古いのは残る
↓
売り手は古いのを処分すべく、
ますます新しいのを減らしていく
業者は既存物件を早く売りたいために新築を減らし、購入希望者は新しい物件に目を向ける。結果として竣工前の物件は減り、競争率はますます跳ね上がる。国土交通省が毎月発表している新設住宅戸数が低迷したまま、むしろ最近ではさらに下落する傾向を見せているのは、「在庫が売れず、新築・竣工前物件ばかり売れる」現在の不動産市場を反映した結果なのかもしれない。だとすれば、少なくとも新設住宅戸数の低迷は(景気の大規模な回復が無い限り)さらに続くと考えても良いだろう。
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