「史上最大の逃走劇」逃げついた先に見たものは……
2009/10/13 17:19
短い時間で強力なメッセージ性を残すことを求められるテレビCM。時としてスリリングでスピーディーなドラマが展開され、番組本編以上のだいご味を感じさせることもある。今回紹介するテレビCMもその一つ。フランスのテレビ局【CANAL+】が放送した、自局宣伝用のCI的な作品である。長さは1分15秒ほどだが、主人公の男性に次々と襲いかかる危機をまずは楽しんでほしい(【トリガー記事:The Presurfer】)。
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フランスのテレビ局CANAL+による自局宣伝用のCM。
TシャツとGパンという軽装で、複数の銃を持った男たちに撃たれつつもなんとか回避し、逃走を続ける男性。大木に登って一難去ったと思ったらその木が倒され、再び銃撃。逃げ切れたかと思った先は滝。滝から落ち、気を失って目覚めると、製材工場の中。
銃撃から免れたと思ったら滝からドボーン。気がつくと製材工場に。
チェーンソーで真っ二つになりそうなところから逃げようすると、工場の機械に押し出され、作業工程の中にぶち込まれる。
「このままだと俺、二人に増えちまう」と慌てて逃げ出すも、木材の押し出し機に巻き込まれて作業工程の中に。そして気を失う。
再び目が覚めるとなぜかパンツ一丁の姿で、クローゼット工場に。逃げ出す間も無く、フタを閉められ……
クローゼット製作工場のベルトコンベアで目覚める男。状況を把握する間も無く、フタを閉められてしまう。
「そして彼らは俺をトラックに詰め込み……」
「それで俺はこんなところにいるわけなんだ」
(背広の男)
「信じられんな、まったく。こんな話、聞いたことあるかい?」
(女性)
「ええ、凄い話だわ」
「それで俺はこんなところにいるわけなんだ」
「信じられんな、まったく。こんな話、聞いたことあるかい?」
要は「浮気」をしていたところに旦那が帰ってきて、慌ててクローゼットに隠れたものの見つかってしまい、「どうしてそんなところにそんな姿でいるのか」と詰問されたのに対し、「クローゼット男」がとくとくと壮大なストーリーを語り(騙り、か)、その理由を説明したというお話。史上最大の逃走劇は、同時に史上最大の「言い訳」だったわけだ。
漫画やテレビドラマなどで時々みかける状況だが、このような形で「言い訳」が再現されると、短いながらも壮大なストーリーを覚えてしまうもの。CMの最後に「物語の力をなめないでネ」(私たちは素晴らしいストーリーと、それを活かす演出で番組を提供しますよ)というメッセージを添え、かのクローゼット男の語る壮大なストーリーを迫力ある演出で再現した事由を説明し、同時にCANAL+の意気込みを訴えかけるCMとして完成させている。
前半部分の手に汗握るアクションの連続と、後半部分の「オチ」のギャップに、開いた口がふさがらない人もいるだろう。しかしその「驚き」もまた、「印象深く記憶に残ることを目的とするテレビCM」ならではの表現方法といえよう。
なお画面に表示されているテキストをよく読みなおすと、脚本家に「Lucas G.」とある。やっぱりあのGeorge Lucas氏なのだろうか。CANAL+とルーカス氏は仲が良いようだし、あながちあり得ない話でも無い気がするのだが……。
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