製造業派遣、スタッフ本人も7割近くが「派遣禁止に反対」

2009/09/24 08:04

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製造業イメージ製造請負・派遣業界団体である社団法人日本生産技能労務協会は2009年7月30日、製造派遣業界の派遣スタッフ及び派遣先企業を対象にした、製造業派遣の法的規制強化に関する意識調査の結果を発表した。それによると、6月末-7月頭の時点で派遣スタッフ自身でも7割近くが「製造派遣の禁止」に反対する意見を持っていることが明らかになった。派遣先企業では9割近くが反対を表明している(【発表リリース、PDF】)。



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今調査は2009年6月25日から7月3日の間に、協会会員企業91社が告知し、紙面による無記名回答式の調査を行ったもの。有効回答数は派遣スタッフが3405人、派遣先企業が1206か所。

派遣社員制度については特に製造業への派遣において、手取り収入の少なさをクローズアップする報道が繰り返し行われることで世論が形成され、「派遣会社が暴利をむさぼっている」というイメージが植え付けられている。現時点では法的に製造業の派遣制度そのものが法律で規制される方向で、政策上の話が進んでいる。

これについては【自分の目の前にあるものがすべてではないことを知る】でも解説しているように「外側だけを見て中を見ずに怒りの声を挙げる」ようなもので、首を傾げるところが多い。その記事でもコメントしたが、報道で語られているように、「派遣業企業は暴利をむさぼっている」という意見について「多数がそのように思っているのか」という疑問への回答の一つが今回の結果。

製造業の派遣禁止について
製造業の派遣禁止について

【「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向】にもあるように、企業全般においては派遣社員を減らし、パートやアルバイトを増やす傾向にある。しかし現在派遣社員を雇っているところが、情勢の変化とはいえ突然ゼロにするわけにもいかない。それに「減らす」イコール「ゼロ」にするとは限らないことにも注意してほしい。

そのような状況下でも、派遣先企業の86.2%、さらには派遣スタッフ自身も67.0%が、製造業の派遣禁止には反対している。さらに「禁止に賛成」とする意見は企業1.1%・スタッフですら9.6%しかいない。判断がつきかねるという意見がスタッフ側に1/4近くいるのが多少気になるが、それが仮に全員「禁止に賛成」に回ったとしても、「禁止に賛成」の数は「禁止に反対」の半分程度でしかない。世間一般に報じられている「製造業派遣禁止を求める、スタッフ自身を中心とした世論の渦巻く声」のイメージとは遠くかけ離れている。

「禁止賛成派」の意見の声が大きくなるのは理解が出来る。そこには現状を打開したいという強い意志があり、現状維持を望む「禁止反対派」よりも必然的にモチベーションが高くなるからだ。とはいえ「声の大きさ」イコール「声を発する人の数の多さ」と誤解させるような伝え方をしたのでは、第三者における判断のかじ取りを大きく誤らせることになる。

「製造業の派遣禁止」は本当に筋の通るものなのか、禁止か継続かというオールorナッシングの手立てしかないのか(【二分法の罠】参考)、そして仮にその通りになったとして、それを望んでいた人たちが本当に望むような状況になるのか。現状の「正しい」認識と共に、再考察する必要があるだろう。



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