少数のお金持ちがたくさんの貯蓄を抱えているのが分かるグラフ

2009/09/16 08:09

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お金持ちイメージ総務省統計局は2009年9月15日、平成20年(2008年)における家計調査年報(貯蓄・負債編)の結果を発表した。日本の世帯全般における家計収支をさまざまな視点から推し量れる貴重なデータが数多く公開されているが、今回はその中から「貯蓄現在高階級別貯蓄の分布状況」をグラフ化してみることにする。言い換えれば「お金持ちの貯蓄額が世間全体の富に占める割合」とでもなるのだろうか(【発表ページ】)。



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家計調査は全国のすべての世帯(学生の単身世帯を除く)を対象として家計収支の調査を行い、各種世帯の特性による集計結果によって、国民生活の実態を毎月明らかにし、国の経済政策・社会政策の立案のための基礎資料を得ることを目的としている。調査期間は原則毎月。毎月6分の1ずつが差し替えられる(今回発表されたのは2008年分のもの)。調査方法は基本的に調査票を用い「調査員による質問」「記入された調査票の回収」などによる。割り当て世帯数は二人以上の世帯が8076世帯、単身世帯が745世帯。

二人以上の世帯について、現在の貯蓄額毎に世帯を区分し、その世帯数割合・区分世帯毎の貯蓄保有額割合をグラフにしたのが次の図。ちなみに「貯蓄」とは通貨性預貯金・定期性預貯金・生命保険など・有価証券・金融機関外貯蓄などを指し、それぞれ当人が抱えている負債は考慮外となっている。【年齢階層別の収入や負債の推移】でも解説しているが、住宅ローンの問題があるため、負債をあわせるとマイナス値を示してしまう可能性があるからだ。

貯蓄現在高階級別貯蓄の分布状況(2008年)
貯蓄現在高階級別貯蓄の分布状況(2008年)

このグラフから、例えば「貯蓄1000万円未満の世帯は全体の51.7%と過半数を占めているが、それらの世帯が持つ貯蓄総額は全体の12.2%に過ぎない」や「貯蓄2000万円以上の世帯は27.4%と1/4程度だが、その世帯が持つ貯蓄総額は70.0%を占める」などの状況が見て取れる。また、一般的に(そして今回発表された家計調査の結果からも)年収の多い世帯ほど貯蓄額も多くなる傾向があるので、必然的に「比較的少数の高額年収が持つ貯蓄総額が、全体の貯蓄の大部分を占める」ことにもなる。

もっとも、世帯当たりの貯蓄総額が大きければ貯蓄全体に占める割合が大きくなるのは当然の話。また定年退職をして多額の退職金や年金保険を手に入れた高齢者のいる世帯が増加していることを考えると、このような偏りが生じるのは当然かもしれない。

また「貯蓄」の中身についだが、貯蓄額が大きいほど「定期性預貯金」や「有価証券」などの割合が大きくなる傾向がある。

貯蓄現在高階級、貯蓄の種類別貯蓄現在高の構成比(二人以上の世帯)(2008年、一部)
貯蓄現在高階級、貯蓄の種類別貯蓄現在高の構成比(二人以上の世帯)(2008年、一部)

貯蓄額が増えるにつれて通貨性預貯金、つまり普通預金など流動性の低い預貯金の割合が増加するのは、「エンゲル係数」と同じ仕組み。つまり自分で事業をしたり高額出費の趣味でも持ち合わせていない限り、流動性の高い資金を常に大量に保有しておく必要がないから。低金利の普通預金にするよりは、高金利の定期預金、あるいはさらなる利回りが期待できる有価証券にした方がよい、という判断によるものだ。

ちなみにグラフ化は省略するが2007年のデータと比較すると、世帯数においては500万円未満の世帯が1.3ポイント増加しているのに対し、他の階層はすべて減少している。その一方、貯蓄の保有比率では500万円未満の世帯は0.1ポイントしか増加していないのに対し、4000万円以上の世帯は0.5ポイントの増加を見せている。1000万円から2000万円の世帯における保有比率が0.7ポイントも減っているところを見ると、「単に高額所得者が増加した」というよりも、「元々保険や手持ち有価証券で1000万円前後の貯蓄を持っていた人が、退職金によるかさ上げで4000万円以上の層に移行した」と見るのが無難かもしれない。


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