「派遣叩き」がもたらす現実……企業は「派遣を減らしパートやアルバイトを増やす」意向

2009/09/12 08:57

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アルバイトイメージ求人広告を企画・発行するアイデムは2009年9月11日、企業の今後における雇用に関するアンケート調査の結果を発表した。それによると、4割近くの企業で今後非正社員の比率を上げていく意向があることが分かった。中でも「パート・アルバイト」の比率を上げる意向が強い一方で、「派遣社員」は比率を下げたい意思が強い。昨今の社会情勢が大きく反映された結果といえよう(【発表リリース】)。



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今調査は2009年7月2日から17日までの間、1235社の経営者・それに準ずる役職の人に対して調査票の配布・のちに回収する留め置き法によって行われたもので、有効回答数は999件。企業の規模は20-99人が41.9%・100-299人が18.6%・10-19人が17.2%などであり、今調査は事実上、中小企業を対象にしたものと考えてよい。

「今後景気が回復してきたら」という前提で正社員・非正社員の従業員比率についてどのように変更を加えるかを尋ねたところ、正社員・非正社員共に「比率はこのまま現状維持」とする回答がもっとも多かった。

正社員・正職員を雇用している企業の、今後景気が回復してきた際の従業員比率
正社員・正職員を雇用している企業の、今後景気が回復してきた際の従業員比率

一方で「比率を上げる」の値を見ると、正社員・正職員が28.2%なのに対し、「正社員・正職員」以外、つまり非正社員の割合を上げる企業は36.0%と約8ポイントも高い。企業側では今後、正社員よりも非正社員の比率を増やす意向が強いことがうかがえる。

非正社員の雇用形態としては「パート・アルバイト」「契約社員・嘱託社員」「派遣社員」の3タイプが代表的なもの。それぞれの非正社員を現在雇用している企業(もちろん「パート・アルバイトと契約社員の両方を雇用している」といった重複もある。その場合はそれぞれ回答している)に、上記と同様に「今後景気が回復してきた際における、3タイプそれぞれの非正社員の雇用比率をどのようにするつもりかを尋ねてみた。その上で「比率を上げる」から「比率を下げる」の値を引いて、「比率を上げる意思の強さ(DI)」を算出し、グラフにしたのが次の図。

現在雇用従業員形態別の、景気回復の際の雇用形態変化率DI値
現在雇用従業員形態別の、景気回復の際の雇用形態変化率DI値

「正社員・正職員」以外の比率を上げる意向がどの企業でも高めなのは上記に記した通り。その他傾向を箇条書きにすると次のようになる。

・どの企業でも「パート・アルバイト」を今後増やす意向が極めて強い。
・「契約・嘱託社員」を雇用している企業は今後同形態社員を増やす意向が強いが、雇用していない企業はあまり関心を寄せていない。
・「派遣社員」を雇用している企業は、今後非正規社員を増やす意向が非常に強い。ただし「派遣社員」は極力減らし、その分を「パート・アルバイト」で補完する傾向がみられる。

特に最後の項目は重要で、「派遣社員」を雇用している企業は元々非正社員に対する今後のニーズが極めて高い。にも関わらず今後はむしろ「派遣社員」を減らし、「パート・アルバイト」を増やす意思を強く持っている。

リリース中には具体的な自由回答の一部が寄せられているが、それに目を通すと「従業員のモチベーションの問題において、派遣社員には疑問」「アルバイトを雇って景気の様子を見て、本格的な回復が確認できたら正社員を増やす」「アルバイトを試用期間・研修のようなものとも受け止め、良い人材をアルバイトから採用することも」などの意見が見られる。また昨今のいわゆる「派遣叩き」的な社会情勢・風潮もあり、「便利なシステムではあるが、周囲から叩かれなるどのリスクを背負うのは……」という企業側の思惑も見て取れる。



元々「派遣社員」のシステムは「終身雇用で働けない事情と技術を持つ人(特に女性)」と「忙しくても(終身雇用制の問題から)容易に人を雇えない企業」を結びつけるために生まれた、マッチングシステムでしかない。リリースの表現にも見受けられる「雇用の調整弁」の意味合いが強い。それをいつの間にか「準終身雇用」的なものと勘違いされ、昨今の「派遣叩き」の対象にさせられ、マスコミが旗を振って扇動する形でデメリットばかり強調されたのでは、企業も雇用モチベーションが下がるのも当然といえる。

「派遣社員」は減り
「パート・アルバイト」が増える。
今後は企業にとって周囲から妙な「叩き」を受けるリスクも無い、パートやアルバイトが、非正規社員の雇用形態の中心となっていくだろう。その場合、求職や条件交渉、雇用されてからの対応などは基本的に、正社員の立ち位置と同様に「企業対本人」でやっていかねばならない。また、労働条件や賃金をはじめとした各種選択も、求職者自身が行うことになる。

「派遣叩き」を声高に語る人の中には「派遣を無くせばその分正社員が増えるから、派遣の人たちも皆正社員になれる」と主張する人もいる。しかし現実には、少なくとも企業の考えとしては増えるのは「正社員」ではなく、「パートやアルバイト」の方が正しいようだ。



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